論文作成の技術

注のつけ方 和書 

注のつけ方 洋書 

注釈記号一覧表

 

  これは論文を書くときの技術的な側面を論じたものである。しかし、これは一般的な傾向を示したものであって、唯一の形式というわけではない。論文の形式については、論文の内容に一致したものであることが、第一に必要である。後は簡にして要をえており、かつ首尾一貫したものが望まれる。
 

 

T論文の準備

  1. テーマ:早く決めること。これは勉強に系統性を持たせるとともに、資料、文献をひろく閲覧できる余裕をもたらすので、有益である。

  2. 問題意識:テーマの選択は非常に重要である。まず、なぜそのテーマを選んだかをはっきり自覚することが必要である。

  3. 研究史:関心をもつテーマに関連した研究が現在どれ位の水準にあるかを調べる必要がある。そして、いかなる問題が前途に横たわっているのかを認識しなければならない。資料、文献の有無も検討の範囲に入る。そのテーマに関する一番新しい論文、著作を読めば、これらのことについての概要を把握できよう。

  4. 著者の条件:自分の得意あるいは興味ある方法論、および習得した語学などの条件に照らし合わせて、そのテーマの執筆が可能かどうかを考慮すべきである。

  5. メモなど、事実の正確な把握、論文作成の効率などのためにメモ、カード、図表を作ることは有益である。(このことについては、梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波書店、1969年、を参考にするとよい)

U論文の構成

  1. 表題:表題、著者、日付を記すために1ページをもうける。ときには論点を一層はっきりさせるために、表題は主題の他に副題をつけることもある。

  2. 序言:著者が読者に私的な話をなす場であり、たんに「序」あるいは「序文」、また、「はしがき」、「まえがき」ともいう。ここでは当研究課題を選んだ私的動機などの論文の成立事情、さらには助力者への感謝の言葉を述べる。

  3. 序論:著者が読者に対して、はじめて主題について語りはじめることころである。ここでは問題提起を行い、主題を確定し、その背景を説明し、同論題についての研究史に触れ、当研究の学問的意味を述べ、また、論文の内容、構成などについて略述する。小論文のとき、序論はしばしば序言と合併して一章をなす。

  4. 本論:序論で提出された主題を充分に、かつ具体的に展開する場である。著者は厳格な論理と厳密な実証によって、論旨に充分な説得性をもたせるように配慮しなければならない。

  5. 章・節:長編の論文は論旨を一層明確にするため、論旨の段落にしたがって、全体をいくつかの章に区切り、各章にはその内容を端的に示す表題をつける。章をさらに節にわけ、また、それに表題をつけることもある。場合によっては、章節の中でさらに区切るため、一行の空白をあけたりすることもある。

  6. 結論:序論において提起された問題に対する答えである。それは本論で展開された議論の総括であり、本論から論理的当為として無理なく抽出されたものでなければならない。「むすび」ともいう。

  7. プロローグ・エピローグ:研究課題が従来あまり知られていない、特殊な理論あるいは歴史の一段面、または特殊な地域を取扱う場合にもうけられる。これは読者を一般的な背景から導入し、再び一般的な背景へつれもどすことによって、特殊の主題をより大きな世界、より大きな流れに位置づけ、読者の理解を深めることに役立つ。

    • プロローグは本文の冒頭の部分におくこともあれば、序論の中におくこともある。後者の場合には序論を「はじめに」とよぶこともできる。

    • エピローグは、ふつう本文の終わりの部分におかれる。しかし、一義的に結論を出せない課題のときには、エピローグの形で論文をしめくくることもあり、その際にはこの最終章は結論ではなく、「結論にかえて」とか、あるいは「おわりに」という表題になる。

V用 語

  1. 術語:なるべく社会科学において確立された術語を多く使用することを心掛ける。そうすることによって分析が深まるし、記述も簡潔となり、読者も著者の意図をとらえやすい。

  2. 未熟なことばなど:多義的なことば、未成熟なことば、新造語などの使用はなるべく避けること。どうしても使用する必要があるときは、必ずその言葉の概念規定を行い、意味を確定して使うこと。

  3. 訳語:非常に普及していることばをのぞいては、そのすぐ後に原文をつけること。人名、地名なども同じく原文をつけなければならない。

  4. 文体:とくに必要な場合をのぞいて、俗語、乱暴なことば、日常会話的な文体は避ける。いわゆる論文調がもっとも好ましい。

  5. 表現:社会科学の論文に、情緒的、感情的表現を多用することは避ける。

W注 釈

  1. 脚注:本文中におくと、主題の流れが散漫になる恐れがあるときは、脚注として本文と切り離して書く。たとえば著者の見解に対する補説あるいは異説、用語の解釈、度量衡の単位換算、統計資料などである。場所は、「脚」注とよばれているように、用紙の下の方に書く。ただし、和文のように縦書きのときには、文章の段落のところに字数を下げて書く。この場合は「割注」とよぶ。

  2. 参照注:これは参照したものを明示して、著者の記述の確度を表すためである。「出典を明らかにする」ことであり、学術的著述には必要不可欠のものである。しかし、一般に知られていること、たとえば真珠湾攻撃の日付などは注を必要としない。

  3. 番号:脚注は同じ個所に連続しておかれている場合にのみ、番号をつける。参照注は各章ごとにわけ、あるいは全編を通じて通し番号をつける。和文著述の場合には、脚注、参照注を区別しないで、同じく「注」として通し番号をつけ、章末あるいは巻末におくことが多い。

  4. 付録:これは注釈の全文に関係するもの、特殊なもの、あるいは量の多いものをとくに巻末につけたものである。たとえば地図あるいはその他の図表など。

  5. 年表:付録の一変種である。事実の経過に重点をおく著作では、よく巻末につけられる。事実の推移を一目瞭然とさせるのに有用である。著者にとっても、論文の準備の段階でこれを作れば、論文の構想および執筆に多大な便利をもたらすし、執筆後にこれを作れば、本文の校訂に役立つ。

X文献目録

  1. 目録:著者の引用した文献、あるいは必ずしも引用していないが、その著述に関係する文献の一覧表である。

  2. 解題:各文献について簡単な説明を加えるとよい。とくに自分の研究と同じものを扱った文献で、その解釈に疑問をもっていたり、その依拠している資料に批判的であったりする場合には不可欠である。これは自分の著述の確度を示すことになるし、後学のもののために甚大な便宜を与えることにもなる。

Y索 引

 本格的な長編の著作には欠くことができない。

 

   
 

 


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